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執筆者の写真沢雄司

ビーチカウンセリングをして思ったこと



浜辺にテントを張り、潮騒をBGMにしたビーチカウンセリング。カウンセリングルームとは異なる空間で、私は毎回、新しい気づきがある。


波の音に耳を澄ませながら、クライアントの言葉に耳を傾けていると、不意に視線が海の彼方に向くことがある。果てしなく広がる海、そしてそれに吹く風が、自然に心を静めてくれる。しかし、悩みを抱えたクライアントにとって、この景色の美しさに気づくことは、必ずしも容易ではないように感じる。


私は、セラピストとして、ただ言葉を尽くすのではなく、自然が持つ癒しの力を伝える「橋渡し」でありたいと思っている。解決を急がず、ただその場で「存在」し、自然の一部としてクライアントに寄り添う。そうすることで、心が少しずつ解きほぐされていくことを願っている。


時には、クライアントがぽつりと「海が綺麗ですね」と言葉を漏らすことがある。その瞬間、私は、自然と人の心が結びつく不思議な感覚を覚える。言葉を超えた何かが、そこに共鳴しているのを感じる。


自然の中に身を置くこと、それは単に悩みを忘れるためではなく、静かに自分自身と向き合い、自然の一部としての自分を見つめるための時間だ。波音や風の囁き、砂浜の温もりが、クライアントの心にじわりと染み入り、言葉では表現しがたい安らぎをもたらしているように思える。

人は自然の中で、ふと「ありのままの自分」に戻りやすくなるのかもしれない。日常の喧騒を離れ、ただそこに「存在する」ことを許された空間で、クライアントは心の奥底に潜む静けさや安らぎに気づいていく。悩みや問題も、少し距離を置いて眺めることで、その重みが軽くなる瞬間が訪れることがあるのだ。


普段のカウンセリングルームにおいても、こうした「橋渡し」を意識していたい。言葉を交わすだけでなく、その奥にある静かな温かみを大切にしたい。クライアントが心の深い部分に触れ、癒しに気づけるように。自然と向き合うように、クライアントと共にその場に「いる」ことで、心の奥底での安らぎを見出す時間を共にしたいと、そう思う。

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