がんばりすぎた心に、戻ってこられる場所を
- 沢雄司

- 1月23日
- 読了時間: 3分
かまくら相談室を訪れる方の多くは、人生のどこかでふっと立ち止まり、「この先、どう進めばいいんだろう」と感じています。
それは、失恋や退職のような大きな出来事のあとだけではありません。仕事を頑張っているのに空回りしてしまう日。人間関係で笑っているのに、帰り道だけ急に泣きたくなる夜。SNSではみんなうまくやっているように見えて、自分だけ取り残された気がする瞬間。
そんなとき、心の足元がゆらぐように感じて、ここに来られるのだと思います。

カウンセリングは、まず「作戦会議」のような場です。
困っているときほど視野は狭くなり、「こうするしかない」と思い込みやすくなります。ここでは一度立ち止まって、いま何が起きているのかを一緒に整理し、どんな選択肢があり得るのかを静かに見渡していきます。
それは勝ち負けを決める会議ではありません。「どうすれば、もう一度ちゃんと息ができるか」を探すための作戦会議です。
同時に、カウンセリングは自分の心への「冒険」でもあります。
普段は近づかない感情、忘れたふりをしてきた記憶、名前のつかない違和感。そこへ一歩ずつ足を踏み入れていくのは、怖さもあります。けれど、冒険には戻ってこられる場所が必要です。

それが「安全基地」です。
ここでは、うまく話せなくてもいい。言葉が途中で途切れてもいい。「こんなこと話していいのかな」と迷ってもいい。評価されず、急かされない関係の中で、心は少しずつほどけていきます。自由でいることは、放り出されることではなく、守られていることから生まれる——そのことをカウンセリングでは何度も見てきました。 安全・安心の重要性は語り尽くせません。
冒険の途中で、人は混乱します。そのとき必要なのが「地図づくり」です。
感情や出来事を丁寧に並べ、いま自分がどこにいるのかを確かめる。地図は未来を決めるものではありません。でも、「迷子のままじゃない」と思い出させてくれます。
そして、心の奥から聞こえてくる声は、しばしばそのままでは理解できません。
カウンセリングは「翻訳室」として、その声を言葉にし、意味として受け取れる形に整えていきます。語りながら流す涙だったり、「本当は寂しかった」「怖かった」「頑張りすぎていた」——そう言えるようになったとき、苦しみは初めて共有できるものになります。

やがて、人生の流れそのものを見直す段階が訪れます。
カウンセリングは「編集室」であり、「実験室」でもあります。これまでの出来事を別の角度から読み直し、「私の人生はこういう物語だったのかもしれない」と静かに編み直していく。そして、これからの自分を少しだけ試してみる。言いにくかったことを小さく言ってみる。境界線を一度引いてみる。人に合わせる前に、自分の気持ちを確かめてみる。うまくいかなくても、ここでは失敗になりません。むしろ、その揺れの中に、あなたらしさの芽が隠れていることがあります。
こうして一つひとつのプロセスを経る中で、物語が静かに立ち上がってきます。
それは「問題が解決した物語」ではなく、「自分の人生を、自分のものとして引き受けていく物語」です。
かまくら相談室は、その物語が生まれるのを急がせることなく、あなたのペースを大切にしながら、共に待つ場所でありたいと考えています。




コメント