自分軸というものについて
私たちは、日々の暮らしの中で何かに巻き込まれる。仕事、家庭、社会の期待。それらはときに風のように、私たちをどこかへ運んでしまう。気がつけば、自分が何を求めているのかもわからなくなっている。そんなとき、人はふと「自分軸を持ちたい」と思うのかもしれない。

自分軸とは何か?
しっかりした、自信に満ちた強固な軸を持つ人もいる。まるで太い幹のように、どんな嵐にも動じずに立っている。しかし、しなやかな柳のように、風になびきながらも決して折れない軸を持つ人もいる。どちらが良いのかという話ではない。ただ、私たちはそれぞれの「自分軸」を持っているはずなのだ。
だが、多くの人が「自分にはそんなものはない」と言う。自分軸を探し求め、何か確固たるものを作らねばならないと焦る。しかし、それは少し違うのではないか。

すでにある「揺るがないもの」
私たちは生きる中で、さまざまな影響を受ける。親の期待、職場の評価、社会の常識。それらに縛られているように思えるかもしれないが、それでも決して揺るがない何かが、あなたの中にある。それは、たとえば「これだけは譲れない」と思う瞬間かもしれない。どんなに周囲の声に流されても、なぜか手放せないもの。幼いころから好きだったこと、気づけばいつも考えてしまうこと。そこにこそ、自分軸の芽がある。

自分軸を見つけるために
では、それをどうやって見つけるのか。すぐに答えが出るわけではない。けれども、まずは静かに自分の心に耳を傾けることだ。日記をつけるのもいい。何気なく大切にしているものをリストにするのもいい。あるいは、誰にも邪魔されず、安心して話せる場で、自分の思いを言葉にしてみるのもいい。
カウンセリングというのは、そういう場のひとつかもしれない。誰かに評価されることもなく、ただ静かに耳を傾けてもらいながら、心の奥にある「自分らしさ」をすくい上げる。騒がしい世の中では気づけなかった「揺るがないもの」に、そこで出会えることもある。

あなたは、すでに「あなた」
「もっとしっかりした自分にならなければ」と思う必要はない。あなたは、もうすでに「あなた」なのだから。自分軸を作るのではない。それを見つけ、育てていくことが大切なのだろう。
風に揺れる柳のように、あるいは大地に根を張る木のように。あなたはどんな軸を持っているだろうか。静かに、自分の心を見つめてみてほしい。

Comments